精神科医が意識低く赤ちゃんを育てるブログ

非医師の超転勤族の夫(育休2か月→復帰)と0歳児とモタモタ暮らしています。

「ママの心はホルモンのせいで不安定」は本当か

◆女の言う「ホルモンのせい」はインチキ?

「妊娠するとホルモンバランスの関係で精神的に不安定になる」ことは、昨今ではもはや常識のように語られます。

 

私も医者とはいえ妊娠は初めてのことでしたので、いったい自分がどうなるのか、不安半分楽しみ半分でした。

 

一般書も試しに読んでみたんですが、そうした本は、

「ママの心は不安定」という理由で

妻が夫に暴言をはくのを正当化したり

「パパはうけとめましょう」「パパのこんな発言はNG」と父親に全ての負担をおしつけたり

「ホルモンのせい」と言えば何をしても許されるかのような物言いで、ちょっと違和感がありました。

 

「ホルモンのせい」と自分を正当化する女性と、

「『ホルモンのせい』なんてインチキ」と思う男性(うちの夫もそう思ってたそうです)

の溝は、

女性が声高に「ホルモン」と叫ぶほど深まっている

ような気がしたので、少しまとめてみました。

私自身が産後、へんなことになった体験談もちょこっと載せてます。

 

◆ホルモンが原因となる精神的変調は、老若男女問わず起こり得ます

ここで、ホルモンと精神状態について簡単にふれておきます。

 

結論としては、ホルモンバランスが精神的変調の原因となることは、あります。

これはフェミニズムではなく、古くからある医学的事実です。

 

たとえば有名な甲状腺ホルモン。

これが多すぎたり、少なすぎたりする病気が原因となって精神症状が出現することがあることは、議論の余地なく認められている事実です。

そしてこれは高齢者でも、男性でも、おこります。

 

同様に、周産期という性ホルモンが大きく変化する時期に、精神的変調をきたす人がいることも事実ですし、病状も、うつ状態だけでなく、躁状態、幻覚妄想状態、精神運動興奮状態など様々な症状がおこり得ます。

 

本人の性格や考え方のせいでもありませんし、ホルモンの病気ですから、ストレスのせいでもありませんし、夫の無理解のせいでも、核家族化のせいでも、現代社会の云々のせいでもありません。

 

◆それなら何をしても良いのか?~刑事責任能力鑑定を参考に

それなら、ホルモンのせいだから仕方ない、、、で良いのでしょうか?

 

たとえば、犯罪をした人が、犯罪と精神疾患に関係があると考えられた場合。

精神鑑定が行われ、

法律家に

心神喪失精神疾患のせいで、物事の善悪を判断したりそれに従って行動する能力が全くなかった)

と判断されれば、処分されません。

 

寝たり食べたり意味のある会話をしたりといった普通の生活が成り立たない状態の方が該当することが多いです。

 

病気のせいでイライラしていた、とか、幻聴に「あいつを殺せ」と言われた、程度だと、

「でも、『悪いことだから、やめておこう』、って思えたはずだよね」

となり、無罪とまではなりにくいです。

 

大袈裟に犯罪の話なんてして本当に申し訳ないですが…。

 

自分が「ホルモンの関係で不安定」であっても

「そのとき犯罪をしても無罪になるほど」でない、

つまり人としてやっていいことと悪いことがわかり自分を抑えられる状態なら、

自分の言動にはある程度責任を持ちたいな

と私は思います。

 

(なお、周産期のホルモンバランスによって心神喪失に該当するほど重症化する例も確実に存在します。その場合彼女らには全く責任はなく、彼女らを責めることは絶対あってはなりません

そして心神喪失ではない私たちがホルモンをふりかざして自己弁護しないことが、彼女らをきちんと守ることにも繋がると私は思います。)

 

◆私が気を付けたこと

パパだって人間です。ママとは違うかもしれないけれど、彼らだって子の誕生を楽しみにしたり、戸惑ったり、不安だったり、責任感を感じたり、いろいろ負担がかかっている。ホルモンバランスは変わらなくても、彼らだってすごくすごく大変なんです。

 

妊婦・産後だからって、彼らにひどいことを言うのは人としてよくないなと。

 

それでも、人間だから(「ママだから」じゃなくて)、ついひどいことを言ってしまうこともあるかもしれません。

そういうときはちゃんと謝りたい。

 

ママとかパパとかいう前に、夫婦は人と人なんだから…

 

というのが、私が妊娠以降気を付けてきたことです。

 

◆ちなみに私はどうなったか

蛇足ですが、私の場合。

妊娠中は多少不安になるくらいで夫に迷惑をかけるほどにはならなかったのですが、

 

産後、謎の「さっきの自分の言動が夫を不快にしたのでは」という不安にかられる病になりました。

急に泣きながら謝り始める私に夫は困惑し、そんな夫に「私は症状性精神病で泣いてるだけなの、あなたが悪いんじゃないの」とさらに謝るカオスでした…。

そんな混沌は1ヶ月健診のころには消えていました。あぁ恥ずかしい。

 

ただ、あらかじめ周産期の精神状態について夫婦で勉強しておいたおかげで夫婦ともにびっくりしないで済みました(夫自ら精神科の教科書を読んで、どんな症状が起こり得るのか、どうしたら良いのかシミュレーションしていました笑)。

 

なので、「周産期は不安定になり得る」ことが一般の方に広まったことはとても良いことだし、これを女性を正当化するためではなく、夫婦で戦略を練るために使えれば良いなと思います。

 

まとめ

◎周産期にホルモンのせいで心が不安定になる人がいるのは医学的な事実です

◎だからといって暴言を吐いたり怒りをぶつけたりを当然と思うのは不当だと思います

◎「周産期は不安定になる」という知識を、夫婦を分断するものではなく夫婦仲良く戦略を練るために使えれば良いな